自分をご機嫌にするヒント

人生にはデコボコがつきもの。自分をご機嫌にする方法を見つけて、楽しく生きるヒントをご紹介。

2012年本屋大賞受賞作『舟を編む』

舟を編む 三浦しをん



2012年本屋大賞受賞作『舟を編む三浦しをん

 

2012年に本屋大賞を受賞し、映画化もされた三浦しをん著『船を編む』。いわゆるフィクション、小説が好きな方ならご存じでしょう。三浦しをんさんは、小説のみならず、毒舌爆笑必至のエッセイストとしても知られた存在。

 

舟を編む』は、辞書作りに人生の全てを捧げた、出版社に勤める主人公たちのお話しです。大きな事件もなく、派手なエピソードもありません。粛々と真摯に辞書を世に送り出す人たちの日常があるだけ。なのに、主人公たちから目をはなすことができず、どんどん物語に引き込まれていきます。

 

真面目な人たちが、真剣に辞書作りに格闘している姿は、どこか滑稽でいじらしい。まさに本の帯に書かれているキャッチコピーそのままに、愛すべきまじめな変人たちなのです。

 

小説はいわば虚構の世界です。ただ、想像できないホラ話しでは、読み手の共感を得ることは難しい。そこにリアルな真実や日常が描かれてこそ、フィクションという世界が成立します。作家三浦しをんさんは、一般的に地味でスポットライトを浴びずに終わる人たちを、卓越した筆力と巧妙な構成力で、見事に輝かせてみせてくれます。

 

辞書に込められた想い

 

この作品に登場する人たちに共通するのは、「言葉」に対しての執着心です。気になる単語があればメモをする。時代と移ろいゆく流行語をキャッチする。誰かと話しをしていても、言葉が気になって、会話が成立しない人たち。ある意味、コミュニケーション能力はゼロですね。

 

言葉は生き物。従って辞書も改定を余儀なくされます。正しく意味を伝える。正確さだけではなく、理解できるように書くことも大事。辞書を引くと殆どの場合、例文が記されています。言葉を文字ではなく、日常の場面に当てはめてイメージできるようにするためです。

 

この本を読んでいると、一冊の辞書にどれだけの想いが込められているのか、改めて考えさせられます。とはいえ、重苦しくはないんです。真面目さが逆に面白く、思わずクスリと笑いたくなるシーンも多々あります。そして、じれったくて一途な恋愛も書かれています。

 

主人公たちは、だれもかれも、真面目過ぎてとにかく不器用。社会的に評価されたり、注目を集めることのない業界に生きてます。舞台の中央に立つことなく、ひっそりと終わる人生です。だけど、ひとつのことに打ち込む姿に、胸が熱くなり、静かな感動を呼び起こします。

 

紙媒体の本がやっぱり好き

 

読み終えた後に、表紙がボロボロになって、文字も擦り切れた国語辞典を手にしながら、ジーンとその余韻に浸っていました。

 

ネットが普及し、辞書も紙からWEBへと変化してきました。実際に私も急いで調べるときは、グーグル先生やWEB辞書を利用しています。小説もネット、モバイルが主流でしょう。ここ数年は電子書籍の台頭も目覚ましい! それでも私は紙媒体にこだわりがあります。

 

ページをめくるときのワクワク感。新しい本から漂うインクの匂い。表紙のデザイン、帯のキャッチコピー。それら全てが私にとっては愛しいから。

 

国語辞典に命をかけた編集者たちを描いた「舟を編む」は、私に言葉の美しさ、大切さを改めて知らしめてくれた、珠玉の一冊でした。

国語辞典がどのように作られているのか、そういう視点でも楽しめる一冊です。
是非、手に取って読んでみてください。

 

おまけ

ちなみに笑える独特な解釈の国語辞典があります。
新明解国語辞典』これ本当に面白い辞典です。
辞典が苦手な方におすすめ。