芸能人じゃなくても歯は命
『芸能人は歯が命』
というキャッチコピーの歯磨き粉がありましたよね。ご存知ですか。年代でもう知らない人も多いことでしょう。ですが『芸能人じゃなくても歯は命』。人間の歯はげっ歯類のように伸びたりしませんから。抜けてしまえばおしまい。
昨夜、3本連結ブリッジの被せモノがとれてしました。『スルメ』をガジガジしている最中のことでした。噛んでいる途中で兆候はあったんです。歯が浮く感覚があって、「うん?」と思いつつ噛み続けておりました。そしたら案の定、とれちゃいましたよ。
通常の被せモノと違って、3本連結ブリッジのヤツですから、右下の奥は大惨事。これじゃあ食事もまともにできません。もちろん作っていただいた歯科に連絡を入れて予約をとりましたよ。でも来週の火曜日まで予約がいっぱいだそうで。その間はこの状況でいくしかありません。
私は歯の被せモノがすぐ取れます。虫歯が原因になることもありますけれど、他に重大な理由があるのです。それは。 『型がとれない奇妙な歯並び』 だということです。私の歯を視た先生が興奮しながら「長いこと歯医者をやってきたが、こんな歯並びは見たことない。ちょっと歯型を取らせてもらえないか」というくらいの奇妙さです。
人の口の中をまじまじ見る人は、歯医者以外にはそうそうないでしょう。ですから比較対象がないわけで、自分では?????でした。ただですね。歯並びにコンプレックスはありました。デコボコしているし、右に流れています。歯並びがよくないことは重々承知はしていたわけです。けれど『見たことのない歯並び』とまでは考えが及びませんでした。
私の歯を見てくださったのは、院長先生でした。ちょっとお茶でもしない、みたいな口調で「ちょっと院長室においでなさい」と手招きされ、すごすごついていきました。そこで院長先生にレントゲンを見せられ、いろいろとご説明をしていただきましたよ。その間、院長先生はとても嬉しそうでしたけれど、私は恥ずかしさで顔をあげることができませんでした。
なんでも、歯並びも悪いけれど、あごの骨格、歯の骨自体も変形・奇形しているんだそうです。歯並びは遺伝によることが大きく、両親はどうか、妹はどうか、と矢のように質問されました。両親はお手本のような歯並びをしていて、虫歯は一本もありません。そう答えると、院長先生は首をかしげてましたね。
「遺伝でないとすれば、後天的な原因かな。ここまで変形するには、相当な力が加わらないとならないよ、普通は」という言葉につづけて、「もしかして赤ちゃんのときに、どっか高い所から落とされなかった?」ともおっしゃいました。
そのことを帰宅してから母親に申しましたところ。「あんたは初めての子で、大切に、大切に育てましたよ」大激怒されました。いや、私がいったわけではなく、歯医者の先生がいったことをそのまま伝えただけですけど。とんだとばっちりを受けましたよ、ホント。
結果としてそこの歯医者には通いづらくなって、それ以降は行っていません。ただひとつ。そこの歯医者さんに指摘されたことで納得できたことがありました。それは、どこへ行っても歯型が取りづらく時間がかかり、治しても治しても、被せモノがすぐ取れるということです。そのときこうも言われましたね。
先生:「他の歯医者さんでは指摘されなかったの? 歯並び」
私:「はい」
先生:「なるほど、指摘して治せなかったら、バツが悪いから言わないんだね」
私:「・・・・・」
確かに今まで、一度たりとも歯並びのこと、矯正のことを指摘してくれた歯医者さんはありませんでした。明らかに歯並びは悪いので、矯正のアドバイスがあったとしてもおかしくないのに。実際、それがずっとコンプレックスでしたし。
矯正もできないレベルってこと?
事実を知ったことで歯医者へ行くことがこわくなってしまいました。ですから、しばらくは痛みを限界まで我慢していました。少々の風邪なら寝ていれば治ります。でも歯は、自然には治りません。我慢した代償として、2本抜歯するはめになり、左上と右下の奥がブリッジになってしまいました(/ω\) 良い子の皆さんはマネしませんように。
今考えればですよ。高知の田舎の歯医者さんの言うことです。どこまで信憑性があったのか疑問に思います。都会と違って患者数が少ないですし、その分、症例も多くなかったことでしょう。都会の歯医者さんだったら、それほど驚かれずにすんだのではないか、と考えたりします。まぁ、わかりませんけれども。
ただ、事実であったっとしても、「トラウマ」を残すような発言はどうか、と思います。伝え方って大事ですよね。私も気をつけよう。
現在、通っている歯医者さんは、腕がいいかどうかは別として、先生がとても大らか。初診の際に「トラウマ話」をしたところ。
先生:「ふうん。でも50年この歯並びで問題ないんでしょう」
私:「でも、歯並びは悪いですよね」
先生:「その先生が言うほどではないよ」
私:「そうなんですか」
先生:「それに、歯並び良くても、虫歯になる人はなるし、歯並び悪くても一本も虫歯ない人いるから。気にしなくていいんじゃない」
私:「・・・・」
大雑把な解釈でしたが、その言葉に正直、救われました。確かに。見たこともない歯並びだと言われても、ずっとこれで生きてきたし、コンプレックスはあれど、それほど大きな問題もありませんでした。なにより「そのままでいいんだ」という安心感を受けました。歯で否定されただけなのに、人格まで否定された気がしていましたから。
歯医者は相変わらず苦手だし、被せモノはすぐとれてお金もかかる。けれど以前ほどコワイところではなくなりました。なんにしても「歯は命」。みなさんも大切にしましょう。