自分をご機嫌にするヒント

人生にはデコボコがつきもの。自分をご機嫌にする方法を見つけて、楽しく生きるヒントをご紹介。

愛するものとの時間が愛しい『一分間だけ』原田マハ著

動物ネタにめっきり弱くなりました。涙腺崩壊してしまいます。若い頃はそれほどでなかったのに、アラカン世代ともなりますと、鼻の奥がツンとして滂沱の涙でございますよ。

 

原田マハ著「一分間だけ」

 

原田マハさんの『一分間だけ』なんて、表紙を見ただけでもう泣けてきます。あきらかに愛犬が亡くなってしまうお話しだし、感動の涙を誘う物語だということは、容易に想像できちゃいます。それでも、まんまと罠にかかるがごとく買いましたよ。

 

そして、やっぱり泣いた! という。

 

ファッション編集者である主人公は、仕事の取材がきっかけとなり「ゴールデンリトリバー」を飼い始めます。ですが編集という仕事は残業も多く、そのお世話の殆どを同棲している恋人が担うことに。仕事、恋人との生活、犬との同居、めまぐるしく過ぎていく日々に、主人公の心は疲弊してしまいます。

 

大事なものを見失ってしまった主人公は、恋人と破局し犬のリラと暮らすことになります。大型犬で世話がかかるリラとの生活に、どんどん苦痛を感じていく主人公。さらには! 精神状態が限界を超えたタイミングで、追い打ちをかけるようにリラが病に侵されて・・・・。

 

という展開です。

 

物語としては目新しさも、特筆すべきことも正直ありません。想像どおりと言ってしまえばそれまでのお話しです。ただ最後まで一気に読ませてしまうのは、原田マハさんの文章の読みやすさです。難解な表現や無駄がない美しい言葉で綴られていて、内容が過不足なくすっと心に届いてきます。

 

なによりも一番の魅力は、『リラという犬の愛くるしさ』これに尽きます。犬は人間に忠実であり、愛情に疑いを持ちません。それでいて人の心の機微に敏感な生き物です。本人さえ気づいていない感情をいち早く察知してしまうところがあります。だからこそ、絆が深くなっていくのでしょう。

 

この物語は単純に愛犬との愛情物語ではありません。本当に大事なものはなに? という問いかけとともに、忙しい日々の中で失われていくもの、捨ててしまっているものに、改めて気づかされるお話しです。

 

24時間、365日、これ平等ですね。「忙しい」「時間がない」は言い訳にならない。そこをどう工夫して自分も周りも幸せに生きていくのかを考えない限り、時間の呪縛からは抜けられない気がします。

 

泣くという行為はストレス発散に効果的だそうです。感動して涙を流すのは特に癒しにもなりますから、ちょっと疲れが溜まってきた方にはおすすめの作品ですよ。もちろん犬好きの方にも。いや、逆に犬好きな方には切なすぎるかな・・・・。

 

何にせよ心が温められる一冊であることは間違いありません。

 

『一分間だけ』原田マハ

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